晴れた空、乾いた空気、暖かい日差しを浴びて首筋にうっすらと汗が浮かんでいる。
春の午後。
蹄の音が、心地よいリズムを奏でて、近江の大地に響きわたっている。
その音を一心不乱に奏でているのは、供回りの者は一人も連れずに、領内視察へ向かった帰りの三成と左近。
畦道は馬を走らせるには狭く、一頭ずつ走らせるのがやっとなくらいだった。前方を走る三成の後姿に目を向けた、左近の身体の中からは、不可思議な欲が顔を覗かせる。
三成が跨っている馬の尻尾が、左右に激しく揺れている様を眺めていると、心の中で得体の知れない不安が燃え上がる。美しい毛並みの尻尾が妙に、艶かしい。
・・・いや、ちょっと待ってくれ。まさか、馬の尻尾に欲情してしまうほど、変態の趣味なんて持ち合わせてなどいない。
春というのは、なんとも陽気な季節だ。左近の頭の中までも陽気にさせてしまうらしい。左近は、小さく溜息をつくと、正常な思考を働かせるように新緑の匂いへと意識を向けた。
※
「けっこうなお手前で。おいしいございました」
左近は、喉の渇きを癒すために、三成に茶を一服点ててもらっていた。三成は小さく頷くと、左近が置いた茶碗を静かに濯いでいる。
殿・・・。小声で呟いて、仕事中である三成の手を、左近は引き寄せた。
『茶が飲みたい』というのは、左近の発する合言葉のようなものであった。
三成の点てた茶を味わった後は、誰彼も近寄らぬ茶室で、二人の時間を楽しみたい・・・ということである。もちろん、その合言葉の意味を理解している三成は、抵抗など見せずに左近の胸におさまっている。
左近は、いつものように、三成を組み敷いた体勢をとり、帯を解くと、男としては白く柔らかい肌に身を埋めた。そして、三成の臀のあたりを撫で回し、指先をツ、と立てた。
「・・・いたい」
「殿・・・少し、我慢してください。少しだけ・・・」
「やはり、それ以上は無理だ・・・すまない左近」
今までに、何度となく繰り返された会話に、左近は微笑した。しかし、その手を緩めることはなく、指先をずらして奥へと進めた。
三成は呻き声を漏らすのを我慢していたが、眉間に苦痛の表情があらわれている。指をゆっくりと外す。そして、おもむろに三成の身体を抱き起こし、四つん這いの格好をとらせた。
不審に思っているであろう三成が抵抗せぬように、左近は、上から覆いかぶさった。
三成は、どういうつもりだ?と、抗議の声を上げた。
「兵法、瞞天過海・・・ってね」
「こういう場合に使うものではなかろう」
「はは・・・」
笑ってごまかす。が、顔は笑ってはいない。
三成も、左近の情念を感じたのか、観念し、協力の体勢をとった。左近は、指先を湿らせると、再び指先でさぐって、奥まで侵入させた。先ほどよりも滑らかに、体内へと這入りこむと、その肉体がきつく萎縮する。
三成の顔を窺いながら、優しく指を躍らせる。高揚させた頬、口元から、あ、と小さく喘ぐ声がする。身体を小さく揺らす、細い身体を見て、昼の、一場面が左近の頭の中に空想のように蘇った。馬への妙な欲情。
馬のような美しい尻尾は、もちろん三成にはない。しかし、赤みがかった、絹のような髪がさらさらと揺れている。妙な色気を感じさせる馬に、三成の幻影を見出していたのか、と己を悲観しながらも、
手の動きを緩めるはしなかった。
そして、もう片方の手で三成の硬くなったものを強くこすりあげた。卑猥な音だけが、室に溶け込んでいる。
三成は身体を震わせると、快が突き抜けたのか、下唇を噛みしめた。
「左近」
「はい・・・?」
「もう・・・・・・」
優しい口づけで、先の言葉を塞ぐ・・・。
春は青く、人を狂わせ、あらゆる情念を犯す。